パズルの形 4

波及効果で、図1の形を考える。

図1 波及効果の形

斜め45の鏡映面があることがわかる。中央には2回回転対称軸がある。 この形には解があるが、唯一解ではない。以下で説明する。

まず、1が最密構造で入ることはすぐにわかる。

図2 ここまで決まる

残りのマスに2と3を入れていくわけだが、よく見ると、下図のように分けて考えることができる。

図3 2種類のグリッドに並ぶ数

例えば、青色のマス群に注目してみる。隣りあう(青い)マスまでの距離は2なので、同じ数字が入ることはできない。したがって、「2」と「3」が交互に入るとわかる。オレンジ色のマス群についても同じことが言える。

青色のマスとオレンジ色のマスは、波及効果の距離依存排他規則では相互作用しないが、同じ部屋に同じ数字が入らないための相互作用がある。 今は二つの数(2と3)だけを考えればよいので、適当なマスをAとおいて、Aと同じ数字になると分かったマスにAを、Aと異なる数字になると分かったマスにBを書き込んでいくと、距離依存排他規則と同一部屋規則だけで、図4の配位が確定する。

図4 2と3の割り当てを追うとこうなる

解を作るためにはこの(A, B)に(2, 3)または(3, 2)を入れればよい。この考察で心配な点は、気づいていない相互作用や制約によって解が破綻しないかということだが、今回は幸い両方とも正しい解になっている。どうして破綻しないのか、という点は味わい深いが、ここでは深入りしない。

さて、こうして得られた解について、よく観察すると、数が斜めに整列していることに気づく(図5)。

図5 同じ数字が斜めに並んでいる

この問題が2解だったのは、上図の赤と青を入れ替える操作で解が変化することに起因していたのである。(一方で、左上と右下を入れ替える鏡映操作では解が変化しない)

以上が図1に対する解の説明だが、この形を私が話題に出した経緯をまだ説明していない。それをこれから書いていく。

まず、波及効果で簡単な入口を作ろうとすると、

図6 1から少しずつ広がっていく入口を作りたい

このようなものが候補として考えられる。この後をどうするかだが、下にl字トリオミノを付けるという方策が思いつく。

図7 下につける形

この展開のさせ方は、「らせん戦略」とでも呼ぶべき戦略の一部と言える。例えば下の図8の形は、部屋のサイズを1, 2, 3, 3, 3から始めている例である。このようにらせん戦略では、中心から開始して、外側に部屋を巻き付けていく。

図8 らせん戦略

上図を見ると、既に数字が斜めに並ぶ傾向が見て取れる。

しばらく試してみると、らせん戦略はパズルとして面白くないという結論に達する。実際、この方針で内側からじわじわと確定する問題を作ろうとすると、斜めに数字が並んでしまうのである。解が予想できてしまうし、そもそも内側から順番に解けていくという展開はどうにも単調である。

パズル全体の構成としては面白くないが、研究対象としてはまだ遊べるし、研究した知識は作問に活かせるかもしれない。もう少し深く見てみよう。

らせん戦略に関する一つの疑問は、外側に巻き付ける部屋のサイズをどのように決定したらいいか、という点である。一つは、解がなくならない最小サイズの部屋を欲張り戦略で付け加えていく方法だが、多解破綻をする可能性もあるので、必ずしも確実な方法ではないだろう。

別のアプローチとして、あえて数字を斜めに並べる、というものが考えられる。

図9 らせん+斜め配列戦略

この場合、すべての数字の情報は、一次元の数字の配列に集約される。

図10 1次元配列を作ってから斜めに展開する

一次元の配列として汎用性のあるものを考えると、3, 1, 2, 1, 3, 1, 2, 1, 3, ...という繰り返しパターンが思いつく。 らせんと一次元配列の相対配置にはいくつかパターンがあるが、一つのパターンを下図に載せる。

図11 [3, 1, 2, 1]配列を詰めたパターン

この形は解のある部屋の区切り方が存在しない(図12)。

図12 角の[3, 1, 3]から2に向かう予約が衝突する

角に[3, 1, 3]があると、二つの3が同じ部屋に入らないという性質と、3が同じ部屋に入るための2を探す性質から、2の方向へ予約が働く。この予約が衝突するのである。

そこで他のパターンを探す。中心を変えるパターンも考えられるが、次のように「斜め」の配列の向きを変えるというパターンも考えられる。

図13 右上への「斜め」にする

このパターンで部屋の区切り方を考えていくと最初の図1の問題になる。