照明 (2)

前回の記事(https://pzdc.hatenablog.com/entry/2022/06/05/175444)で美術館の照明数の下限(必要照明数)について考えた。

今回は上限(十分照明数)について考えてみる。

用語の定義

今回の記事では次の用語を用いる。

  • 必要照明数: 与えられた図形の(美術館のルールに従う)照明数の最小値。
  • 土台数: 与えられた図形を包含する図形集合の必要照明数の最小値。
  • 十分照明数: 与えられた図形の(美術館のルールに従う)照明数の最大値。 
  • ギャップ: 十分照明数と必要照明数の差。

与えられた図形に対して具体的な照明配置を与えると、それは必要照明数の上界を与え、同時に十分照明数の下界を与える。必要照明数の下界を与えるには、-1の照明数の時に照らされないマスができることを示せばよかった。十分照明数の上界を与えるには、+1の時に照らしあう照明ができることを示せばよいだろう。

柱がない場合

前回同様、まずは柱がない長方形(正方形を含む)から考える。

図1 柱がない場合

3x5の盤面を図1に示している。必要照明数の配置が下界3を与える。

3つある行について、どの行にも最大で1つの照明しか入らないため、合計で最大3つしか照明が入りえない。これから上界数3がわかる。鳩ノ巣原理で説明することもできる。

よって3x5の十分照明数は3である。

容易に一般化ができて、長方形(正方形を含む)の十分照明数はmin(M, N)である。これは必要照明数と等しいため、ギャップは0である。

長方形に柱を一つ:概観

まず、ざっくりと試してみて傾向をつかみたい。

図2 柱が一つの場合の概観

図2に3x5長方形の場合について具体的な配置の例を載せている。配置を作る際は、「なるべく」多くの照明を置くように意識している。

図2の傾向から、次の予想が立つ。

  • 柱が短辺上にある場合は、十分照明数はmin(M, N)である。
  • 柱が短辺上にない場合は、十分照明数はmin(M, N)+1である。

図2の例は長方形だった。正方形で試しても同じ傾向が見られる。

長方形に柱を一つ:上界

上界の証明は易しい(図3)。

図3 上界の証明

長方形を、長辺方向に分割する(正方形の場合はどちらでも可)。すると、短辺上に柱がある場合は、min(M, N)個の領域に分割され、それ以外の場合はmin(M, N)+1個の領域に分割される。鳩ノ巣原理より、十分照明数の上界がこれらの領域の数と等しくなる。

長方形に柱を一つ:下界

下界を示すためには具体的な配置方法を与えればよい。

図4 短辺上にある場合の配置例

短辺上にある場合は、前回と同様、柱の位置を基準として周期境界で斜めに並べていけば良い(図4)。

図5 短辺上以外にある場合は(M-1, N-2)に帰着

短辺上にない場合は、柱の(長辺方向の)両隣に照明を置くことができる。これによって、(M-1, N-2)に帰着できる(今は、短辺をMとしている)。この方針でM+1の配置が作れそうだが、心配としては、①MとNが近い場合と、②Mが小さい場合の2つがある。

①MとNが近い場合、特にM=Nの場合は、図5のように両隣に照明を置いて削ると、短辺と長辺が逆転してしまう。そこで、正方形の場合は下の図6のように柱の四方に置く(正方形の場合で柱が短辺上にない、というのは、柱が辺の上にないということなので、このような照明の配置が常に可能である)。

図6 正方形の場合は(M-3, M-3)に帰着

②Mが小さい場合について、これまであまり正確に触れてこなかったが、私はとりあえずMが2以上の場合を想定している(M=1は自明のため)。上の説明で怪しいのは、M=2とM=3あたりだろうと思われる(このあたり、毎度ながら怪しい議論で申し訳ない)。ざっと確認したところ、大丈夫そうである。

ここまでのまとめ

ここまでの結果を表にまとめる。

全体的に議論が甘いので、誤りがある可能性があることを断っておく。

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